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ダーカンプの夢の跡

After the Dream of DARCOMP ブロガーによるリレー形式小説です。先の展開も結末もその時の書き手によって変わるストーリーを書いてます

5. 迷い込んだ雑踏の中で握りしめた手

今夜は楽しい。純粋にそう思っていた。あんな出来事に巻き込まれるまでは・・。

 

ヒデはすっかりミユキと二人でワイワイ話が盛り上がっていた。

普段から仲のいい二人なんだろうと思えるくらい息がピッタリだし、冗談を言ったら即ツッコむそのテンポは、TV番組に出てくるくだらない芸人なんかよりずっと面白かった。

 

お皿に盛られたルッコラを食べ終わる。

あまり話さない方だし、今日は初対面の女の子もいる。ちょっとした間を感じると何かしなくては…と妙に焦る。ゆえに箸が進む。

 

ヒデがよく来るだけあって、どの料理も美味しい。やっぱり飯は美味しいに限るし、お酒と料理の味を楽しむことも少しずつ覚え始めたころだった。

 

ふと、空っぽになったお皿が宙に浮いた。

アカネが僕のお皿を手に取ってルッコラを入れようとしてくれていたのだ。

 

「まだ食べるよね?大輔くん、さっきから食べてばっかりで食べるの好きそうだし笑」

 

笑った時に顔がクシャっとなるのがアカネの魅力的なところだった。本当はお腹なんてそんなに空いてないのに、断れない。いや、断りたくない、と言った方がいいか。

 

「ありがと、アカネちゃんは食べなくていいの?」

「ううん、私は平気。大輔くんみたいにあんまりたくさんは食べられないよ」

「ところで、アカネちゃんも同じサークルなの?」

 

「いいや、私は単純にミユキと仲がいいだけだよ。サークルは別なんだ」

 

「ふーん、何のサークル入ってるの?」

 

「英語でスピーチとかするサークルだよ」

 

「えーじゃあ英語しゃべれるんだ!すごい」

 

「ちょっぴりだけどね笑 でも、人前で話すのって緊張するじゃない?わたしそういうの苦手でさ。そんな自分をちょっとは変えたいかなって思って」

 

大人しそうな印象だったのに、自分と向き合う前向きな子なんだと思った。しかも英語も喋れるってすごい。パチンコ屋なんかでバイトばかりしている自分が少し惨めに思えてくる。

 

アカネとは話しやすくてお互いに波長が合う気がした。ミユキとは全くの正反対の性格だけど、こういう二人がすごく親友だったりするから人間って面白い。

ちょうど、僕とヒデと同じような感じなのかもしれない。心のどこかでそう思った。

 

ヒデ「よぉーし、音聞きに行こうゼ」

 

ミユキ「大輔くん、クラブとか行ったことある?」

 

ヒデ「コイツはそんなとこ滅多に行かないから。でも、今日くらい行ってみようぜ、案外ハマるかもしれねーしさ」

 

ミユキ「じゃあ決定ね!いこいこぉー」

 

すっかり酔って盛り上がった二人に連れられてお店を後にする。美味しかったし、お店の名前をちゃんと覚えておこうと思ったけど、二人の勢いに乗せられてお店の看板もロクに見れなかった。

 

僕らはそのままクラブへと足を伸ばした。

 

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グイグイと引き寄せられるままに連れて来られたクラブの中に入った途端に、押し寄せる爆音が顔にぶつかって流れるように耳の中に響き渡った。初めて、と言えば初めてだったけどお酒にはやっぱり強くて全然酔っていない。

 

テンションの保ち方に少し戸惑う。

 

うんざりするような人混みをかき分けてカウンターへ向かおうとした時、ふと右手を掴まれた感覚があった。

「はぐれないようにちょっと掴んでてもいいかな」

 

僕の視線の先にはアカネがいた。

 

爆音の中で静かに頷いた僕は、しっかりと手を掴んだまま一歩ずつ人混みをかき分けた。

ダーカンプの夢の跡って?
ブロガーによるリレー形式の長編小説。順番に書き手が思うがままに物語の続きを書いていくことで成立する筋書きのない物語です。書いている私たちにもその行く末は全く予想ができない、そんな試みです。
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