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ダーカンプの夢の跡

After the Dream of DARCOMP ブロガーによるリレー形式小説です。先の展開も結末もその時の書き手によって変わるストーリーを書いてます

8. 思い出したら恥ずかしくなるような言葉が言えるのに

すこし客観的に自分を実況しながら、青春ってこういうことなのかな、と味わっていた。

 

始発までまだまだ時間がある。深夜のクラブでぼくたちは、青春の真っただ中にいる気分だった。ただただ楽しい、そんな時間だ。明日にはひどく疲れが残っていることくらい分かってる、でも楽しい。

 

ヒデとミユキはダンスホールの真ん中あたりで隣同士で踊っている。ぼくとアカネは、お酒を頼むカウンターのあたりで話していた。

 

アカネ「大輔くんてさ、全然酔わないね、お酒つよいの?」

 

ああ、と僕は答えて、ビールの瓶を傾ける。アカネちゃんはかわいい、屈託のない笑顔で、将来の夢や希望を僕に語ってくれる。もっとお酒が弱ければ、もっと積極的に話せたのに。もっと平常心を失って、思い出したら恥ずかしくなるような言葉が言えるのに。

 

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アカネ「ねえ、だーいーすーけーくん!お酒つよいの?これ飲んでよ!」

 

アカネちゃんは酔っ払っていた。顔を赤くして、シラフなら恥ずかしい距離で話しかけてくる。カナカナのカクテルを進めてくるので、ぼくは仕方なく飲んだ。ジュースの味だ。

 

ぼく「アカネちゃんてさ、ペット飼ってる?」

 

んーー?となんでそんなこと聞くの?という顔でこちらを見てくる。ウンっとうなづき、微笑む。

 

ぼく「わかった!犬でしょ?」

 

ブーーー!と思いっきり頬を膨らませて答えるアカネちゃんは本当にかわいい。

 

ぼく「じゃあ、猫?」

 

ブーー!また外してしまった。なにを飼っているのか見当がつかない。なんと不毛で、なんて平和な瞬間だろう。またもや冷静なような、客観的なぼくが顔を出す。べつに問題の答えなんてどうでもいい、正直な気持ちだった。なにか他愛のないことを、アカネちゃんと話していたかった。

 

アカネ「あ、どうでもいいって顔したでしょ?ちゃんと当ててよね!」

 

見抜かれた、と思ったけれど、自分の表情を読んでくれることも嬉しかった。すこしこの瞬間に酔っている感覚だ。

 

ぼく「だめだ、犬と猫以外のペットは中部地方じゃ飼っちゃいけない条例あるんよ。」

 

まったくのでたらめを言うと、うそ?という顔をして僕に問いかけてくる。

 

ぼく「ごめん、うそ。」

 

なーんだという表情を見せて、踊ろうと言わんばかりに僕の手を取ってホールの真ん中へ導いていく。今日ここへきたときは、すこし不自然に握ったはずの手が、いまはもう自然につないでいる。

 

いつのまにこんな距離を縮めたんだろう。次の日、ぼくたちはどれくらい今日のことを覚えているだろうか、できれば全て覚えていたかった。できれば、みんな覚えていてほしかった。あんな出来事にすべてを塗りつぶされてしまうなんて思っていなかったから。

ダーカンプの夢の跡って?
ブロガーによるリレー形式の長編小説。順番に書き手が思うがままに物語の続きを書いていくことで成立する筋書きのない物語です。書いている私たちにもその行く末は全く予想ができない、そんな試みです。
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